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望雲録

のぼってゆく坂の上の青い天にもし一朶の白い雲が輝いているとすれば、それのみをみつめて坂をのぼってゆくであろう。

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 「犬と子供のしつけはドイツ人に任せろ」という言葉がある。ドイツ人が犬好きでしかもしつけ上手だというのは古典的なKlischee(ステレオタイプ)だが、この国で暮らしている実感としてはあながち的外れではない。

DSCF6148.JPG ドイツでは市街地でもよく犬を連れて散歩をしている人を見かける。品種はシェパードやレトリバーなど大型犬からスピッツやチワワのような小型犬までさまざまで、日本で馴染みのあるものも多い。紐をつけていないこともしばしばだが、犬は道端に失敬することもなく、唯々諾々として主人に従って歩いてく。そのまま路面電車やレストランに入っていくことも珍しくない。

 この国では犬の社会的地位は高い。電車やバスなどの公共交通機関では大抵犬の同乗が認められている。レストランやスーパーなどにも問題なく入れる。ホテルですらこの点には注意を払っており、多くの場合動物の持ち込み可否はHP等でもわかりやすい箇所に明記されている。

 だが並の日本犬ではこうした待遇は認めらDSCF6211.JPGれないだろう。この国の犬は驚異的に従順で大人しく、混雑した電車の中でも他人の匂いを嗅いだり主人にじゃれついたりすることはない。ましてや吠えることなど決してなく、じっと床に伏せたまま降車駅まで静かに佇んでいる。ドイツに入国してから無数に犬を見かけたが、まだ一度も人に吠えかかる姿を見かけたことはない。犬が日常生活のルールに溶け込み、人間の妨げになることがないのである。

 私はこの国に来てから犬という動物に対するイメージが大きく変わった気がする。同じ動物であるのになぜ国によりここまで性質が異なるのか。この違いはおそらく血統的な要因やしつけだけによるものではないだろう。社会全体が醸し出す漠然とした「空気」というものが大きな役割を果たしているように感ぜられる。日本の犬をドイツに持ち込んだらどうなるのか、その逆はどうか、少し興味がわく。

DSCF6213.JPG 考えてみれば動物の性質が全世界共通である理由はどこにもない。人間に民族性があり文化があって地域ごとに気質の違いがあるのと同じように、犬にも(品種による相違とは別に)文化があり地域ごとに気質の相違があったとしても、何ら不思議な話ではない。

 ちなみに今のところ街中で猫を見かけたことはない。これだけ犬と人の関係が密接な国では、つけ入る隙はないということだろうか。

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無題

エジプトの犬はダラダラしてるよ。文化を感じます。ちなみに彼らの社会的地位はすこぶる低いです。

>無題

どうもどうも。来訪ありがとうございます。人間以外の生き物も観察してみると結構違いがあったりして面白いですね。

無題

たしかHundsteuerっていう税金があったような気がしますが、そこも大きな違いなのですかね?

>無題

貴重なコメントありがとうございます!ご指摘のHundsteuerについて少し調べて見たところ、犬一匹ごとに年単位で課せられ地方直接税である由。税額を決定するのは自治体の権限なので地方により税率が異なるそうです。起源はなんと19世紀のプロイセンで、もとは贅沢品への課税と位置付けられていたそうです。いやあ、面白いですねえ。

無題

台湾でも犬はあちこちに居ます。みんなふつうに喫茶店とかにつれて入ってきます。マルチーズを見ると(種類が同じなので)ものすごく実家が恋しくなります。

>無題

どうもどうも。ningengenさんかな?犬をはじめペットの位置づけって結構その国の文化を知る重要なバロメーターになるんじゃないかと思い始めてます。東洋でも国ごとに観察してみると面白いかもしれませんね。

無題

そういえば、フランスでは幼児が親類の犬にかまれて死亡する事件が1週間ほど前にあったことをうけ、猛犬に対しては躾けコースを義務化する立法を現在検討中とのことらしいです。田舎では狩猟が盛んなこともあって猟犬を飼っている家は珍しくもなくて、事故も結構多いよ。ドイツも田舎だとまた違ったパーセプションがありそうじゃない?パリの犬は割とおとなしいけど、小型犬ばっかりです。アパート暮らしがメジャーだからと思われる。

>無題

知人に聞いたところ、ドイツでも犬のしつけ学校があるそうです。都市部の犬は結構な割合でそこに通わされる由。確かに田舎だとまた犬も違う雰囲気をもってそうですね。また観察してみます。

無題

フランクフルトではたまにのらっぽい猫を見かけることがあります。

ご指摘のとおり、犬のしつけは見事なもんですね。絡まれたこともないし、犬同士で吠え合っているのも見たことがない。

>無題

こりゃどうも!ドイツの空気はいかがでしょうか。同じ国に在住する身として、おかしなこと書いてたらつっこみ入れてくれると幸いです(笑)。今後もよろしくです。

英国の場合

英国でも、リヴァプールで獰猛な飼い犬が赤ちゃんを噛み殺した事件が大きく報道されていました。赤ちゃんのお祖母さんが、雨に濡れている飼い犬を不憫に思って家の中に入れてしまったために発生した事件で、お祖母さんは過失致死罪で逮捕。悲惨な事件です。

当地での犬の地位は幼児と同じくらいと思われます。昔ほどではないとは聞くけれど、ショッピングセンターや街中で、飼い犬につけるようなリールを子供につけている親は結構多いですね。

>英国の場合

どうもです。犬の項目が予想外に盛り上がっているので少し驚いてます(笑)。
幼児が犬並ということですか(笑)。日本人としては結構抵抗がある風景ですね。そういえばこっちでは日本にいたときに比べ赤ん坊を見かける機会が明らかに多い気がします。友人に話したところドイツ人の子供の数自体は例にもれず減少しているとのことですが…。

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HN:
Ein Japaner
性別:
男性
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趣味:
読書、旅行
自己紹介:
三度の飯より政治談議が好きな30間近の不平分子。播州の片田舎出身。司馬遼太郎の熱狂的愛読者で歴史好き。ドイツ滞在経験があり、大のビール党。
[12/16 abuja]
[02/16 einjapaner]
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