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望雲録

のぼってゆく坂の上の青い天にもし一朶の白い雲が輝いているとすれば、それのみをみつめて坂をのぼってゆくであろう。

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勤勉なドイツ人?(2)

 上にあげたのはあくまで一例で、他にも「ドイツ人のいい加減さ」を示す事例をあげればきりがない。「法律と軍隊と官僚の国」というステレオタイプを強く持っていた自分にとっては、この点は少し意外だった。どうもこの社会ではいわゆる「担当者」たちが自分の担当範囲に大きな裁量と強力な権限を持っているようで、それが仕事のクオリティーのむらを生む一つの原因になっているように感じられたのだが、それを差し引いても日本人と比較すれば「雑」であることに変わりはない。
 ただ欧米の他の国、たとえばアメリカやフランス、イギリスに留学経験のある知人の話などを聞いていると、もっとひどい話はいくらでもあるようで、これらの国に比べるとドイツ人が相対的に「勤勉な国民」であることは間違いないようである。

 考えてみれば我々の西洋人の「国民性」イメージの大半は、西洋において西洋の価値観の中で形作られてきた各国民のイメージが、西洋初のメディアに乗って一方的に流入してきたものであると言ってよい。ドイツ人への評価にしても、日本人が直接ドイツ人と国民レベルで交流し、その結果の蓄積として自生的なドイツ人イメージが形作られてきたわけではなく、映画やジョークを通じて西洋から流入してくる彼らのイメージを検証の機会もなくそのまま受け入れ消費してきた面が強いのではないだろうか。実際、他の欧米人に聞いてみると、ドイツ人の仕事への評価はやはり高い。そんな西洋コミュニティのイメージを何となく抱いたまま現地で生活をはじめた日本人が、初めて自分の尺度でドイツ人と交流する機会を得、イメージとのギャップに気がつくというのは、ある意味当たり前の光景である。西洋の尺度と日本の尺度は相当のズレがあるわけで、ドイツ人という国民に対するイメージにも当然ずれが生じるわけである。

 こと仕事、勤勉さという点ではこのズレはかなり大きいと思う。これはまた項をあらためて書きたいと考えているが、ドイツ人はサービス残業や休日出勤などまずしないし、長期休暇は彼らの人生にとって最大の関心事である。普通のサラリーマンが企業戦士と称して過労死する日本とは価値観が土台の部分で異なるわけで、質的にも量的にも「勤勉」の意味するところが西洋と日本では全く異なるのである。結局、「ドイツ人は西洋では勤勉」ということであり、それ以上でもそれ以下でもないのだと思う。

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自己紹介:
三度の飯より政治談議が好きな30間近の不平分子。播州の片田舎出身。司馬遼太郎の熱狂的愛読者で歴史好き。ドイツ滞在経験があり、大のビール党。
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