日本人にとって、『地球の歩き方』は言わずと知れた海外旅行のバイブルである。街中でもこの黄表紙のガイドブックを頼りに観光している日本人の姿を見かけることが多い。文字通り歩いて回る旅行に必要な情報が分かりやすく盛り込まれており、これ一冊あれば特に現地で観光情報を仕入れなくても十分に観光を楽しめるだけの情報がそろっている。単に観光客のみならず、実際に現地に住んで生活している身となっても、世話になる機会は少なくない。
ドイツ人は旅行好きだと言われる。もちろん本屋に行けば旅行関連の書籍に結構なスペースが割かれている。そして日本と同じく、世界のあらゆる地域について、それぞれ複数の会社のドイツ語(または英語)のガイドブックが並べられているだが、その中身は我々の常識とは大きく離れたものである。
主な目的地を明記した地図、そこまでの交通手段と所要時間、博物館・美術館の開館日や開館時間、主要なレストランやホテルの位置と連絡先―こうした基本的な情報が一目で分かるようでなければ日本ではまず通用しないと思うが、この点こちらのガイドブックは不親切極まりない。もちろん会社ごとに個性があるので一律には言い難いが、一般的に都市や観光施設の歴史・文化背景的な記述に大きなウェイトが割かれており、写真以外の部分は文字で埋め尽くされていて、一目見ただけではどこに必要な情報があるのか実に分かりにくい構造になっている。
ひょっとするとこちらのガイドブックは携帯用に作られているわけではなく、事前の観光地選びのための情報源としての側面が強いのかもしれない。いずれにしてもこれだけを頼りにして旅をすることはまず不可能で、インターネットや現地の観光案内所など他の情報源をうまく利用しないと快適な旅を実現することは難しい。 PR
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