“A World that Stands As One“ と題された今回のオバマ演説は何より「ブッシュ政権の一国主義からの転回、大西洋関係の再構築」に重点が置かれている。ありていに言えば、その最上のダシとしてベルリンが使われている。
オバマ氏は演説の冒頭でいわゆる「大空輸作戦(写真左)」の精神に言及する。1948年6月、ソ連側の西ベルリン封鎖に対抗するため、西側諸国がリスクを承知で大量の物資を西ベルリンに空輸し、この街を死守する意思をソ連側に示した。自由と民主主義の精神を守り通したベルリン市民を賛辞し、米欧の連帯の精神を強調する。
続いてベルリンの壁の崩壊に言及しつつ、現代の国際社会におけるさまざまな課題に対処するためには米欧間の協調が不可欠であることを説く。そして協力を妨げる「新しい壁」を突き崩さねばならないと述べる。
「大西洋両岸をまたぐ同盟を阻む壁の存在を許してはならない。民族や人種の間に横たわる壁を許してはならない。移民と現地人、キリスト教徒とムスリムとユダヤ人を分かつ壁を許してはならない。これこそ我々が今突き崩さねばならない壁である。」
そして具体的な政策課題を述べた後、アメリカ国内を意識してであろう、演説の最終部で自らのアメリカへの愛、そしてアメリカの理想こそが恐怖と欠乏からの自由を切望する世界中の人々を惹きつけてきたのだとする。そしてその理想を再びベルリンと結びつける。
「この切望こそが全ての国家の運命とこの街とを結びつけているものなのだ。この願いの前には何物も我々を分かつことはできない。大空輸作戦はこの願いから始まった。すべて世界の自由なる人々が『ベルリンの市民』となったのもこの願いからだ。そしてこの願いゆえに新しい世代である我々は世界に自分たちの道標を打ち立てねばならないのである。」
『ベルリンの市民』の下りは明らかにケネディ演説の借用で、演説のクライマックス、忘れた頃に自然な流れの中でさりげなく挿入してあるところがニクい演出である。
試みにBerlinという単語が演説中に何度登場するかを確認してみたところ、30分弱の演説中実に22回言及されていた。舞台がパリやロンドンではこの頻度はちょっと考えられないだろう。
演説のパフォーマンスとしてはさすがとうならせられるもので、中継を見る限りでは現地のベルリンの群衆たちの反応も非常によく、興行的には大成功と言ってよいと思う。
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