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望雲録

のぼってゆく坂の上の青い天にもし一朶の白い雲が輝いているとすれば、それのみをみつめて坂をのぼってゆくであろう。

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ドイツ議会制の特徴(6)~モデルとしてのドイツ基本法

 ドイツ人が議論好きだというのは決して偏見ではない。議論のために時間を投入することを惜しむことはなく、ドイツ語が中途半端な外国人が相手でも、繰り返し手を替え品を替え言葉を通じて自分の主張を理解させようとする。その粘り強さには時に自分のような日本人は辟易させられることが多い。徹底的に議論して論点をつぶし、曖昧さを排し、その上で妥協し、紙に落とす。しかる上で一気呵成に執行する。これがドイツ人の流儀である。

 制定者たちがそこまで考えていたかどうかは不明だが、連立交渉、合意文書の作成、それに基づいた政権運営という政治制度は、ドイツ人の気質によくマッチしているように見える。5党制の下のドイツ政治の未来についても、議論を通じた交渉と妥協を何より得意とするドイツ人気質に鑑みれば、それほど悲観的になる必要はないのかもしれない。

 ドイツ人のドイツ基本法に対する評価は概して非常に高い。もちろんこれは狭義の政治制度のみならず、強力な司法のチェック機能、戦う民主主義、連邦制など諸要素の総合的な評価によるものだが、衝撃的な敗戦と占領軍による分割統治という状況から発し、構造的に分権的な要素を内包している戦後ドイツ政治の中で、国家がGrundgesetz_cover.jpg政治的に分裂せず高度な安定性を確保しえたことに関しては、この政治制度が大きく貢献しているのは間違いない。

 ドイツ基本法は一つの成功モデルとして、冷戦後の中東欧諸国をはじめ世界各国の憲法に多大な影響を与え、頻繁に参照・模倣されている。明確な設計思想とそれに起因する論理性とが、モデルとしての価値を高めているのであろう。
 この基本法はドイツ人の気質に適合的である点を超えて、他国にも適用可能な一つの普遍的な民主主義のモデルを提示しているわけである。ドイツ人が誇りに思うのも無理はない。

 歴史からの教訓、政治文化との整合性、明確な理念と設計。理念としての平和主義が突出している我が国の憲法は、現実に耐えうる一つの強靭な制度としての民主主義のモデルを、果たしてどこまで提示できているだろうか。その要たるべき議会政治の混沌とした現状が否応なく頭をよぎる。日本国憲法が他国に模範として導入されたという話は、寡聞にして聞かない。

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自己紹介:
三度の飯より政治談議が好きな30間近の不平分子。播州の片田舎出身。司馬遼太郎の熱狂的愛読者で歴史好き。ドイツ滞在経験があり、大のビール党。
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