のぼってゆく坂の上の青い天にもし一朶の白い雲が輝いているとすれば、それのみをみつめて坂をのぼってゆくであろう。
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前述したとおり、ドイツでは連邦議会議員の任期は通常4年であり、また連邦参議院は民選ではないので、日本に比べると国政選挙の機会は少ない。一方、この国では地方でキャリアを積んだ政治家がいきなり中央政界に閣僚や首相候補といったハイレベルで乗り込むことが多いので、16ある各州の議会政治の動向も大きく注目される。そのため州議会選挙も全国レベルで高い関心を集めることになる。
その中で今年2月末に行われたハンブルク州議会選挙は、連立という文脈から見ても非常に面白い結果となった。
ハンブルク(位置は右参照)は一つの市にすぎないが、法的には16ある連邦州の一つである。選挙では予測通り与党CDUが第一党の座を確保したが、単独多数に達することができなかった。一方で潜在的な連立パートナーであるFDPは4.8%の得票とわずかに5%に届かず議席を確保できず、代わりに左翼党が6.4%を獲得し進出に成功した。結果、多数与党の構築にはCDUがSPD、緑の党、左翼党のいずれかと連立を余儀なくされるという状況になった。
CDUにとり左翼党との連立は論外だが、緑の党との連立に関しては近年その可能性がクローズアップされているところであった。「CDUで経済、緑の党で環境」という組み合わせを求める声は世論調査でも意外と人気があったこともあり、結果、CDUはSPDとの大連立ではなく緑の党との交渉を選び、4月に連立合意が成立する。州レベルで初の黒緑(Schwarz-Grüne)連合の誕生であった。
この事件は今後のドイツ政治にとり大きな意味を持つ。というのは、従来CDU/CSUの連立パートナーはFDPに限られており、緑の党、FDP、場合によっては左翼党と多様な連立の選択肢を持つSPDと比べ、5党システムの下では構造的に不利な状況に置かれていたからである。
SPDの側はすでに州議会でSPDー左翼党の赤赤連合、それに緑の党を加えた赤赤緑連合(ベルリンなど)、SPDー緑の党ーFDPの信号連合(かつてのブレーメンなど)を実現させており、着実に連立のレパートリーを増やして来た経緯がある。
そんな中、今回の連立が順調な成果を上げれば、他州や連邦レベルでも緑の党とCDU/CSUの連立の可能性が出てくる。FDPも合わせたジャマイカ連合の実現も視野に入ってくる。その意味で今回の黒緑連合の成立はCDU/CSUの政治的選択肢が大幅に拡大したことを示しているのである。(右は連立合意書を手にする両党の州議会幹部。カバーが黒と緑の組み合わせになっている。)
ドイツは州政治の独立性が高いので、今回の事態がすぐに連邦レベルの大連立政権に波及するわけではない。しかし今後は選挙で多数を確保することのみならず、選挙後に有利な形で連立政権を構築する交渉力が一層要請されてくると思われる。選択肢が増えることは、方程式がより高次になり解が増大することと同義なのである。
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