のぼってゆく坂の上の青い天にもし一朶の白い雲が輝いているとすれば、それのみをみつめて坂をのぼってゆくであろう。
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さて、ドイツの話である。
ドイツの連邦議会(下院)制度を特徴づけているのは一言で言えば「ワイマールの教訓」である。少数政党の乱立、倒閣のための不信任決議の連発といった事態が政治の流動化を招きナチスを台頭させたという反省に立ち、「安定」という要素を強く意識した内容となっている点が面白い(右はベルリンの連邦議会)。
有名な5%条項(比例代表制選挙の下で5%の得票を獲得できなかった零細政党は議席を持てない)や建設的不信任案(内閣不信任は次期首班候補についての合意が形成された際にのみ可能)などの制度は、言ってみれば多党制による民意の吸い上げと個々の政権の安定とをいかに両立させるか、という問題意識に基づいていると解することができる。デモクラシーの過剰が議会政治を不安定化させることを身をもって体感したドイツ人が知恵を絞って生み出した、この国独自の制度である。
重要なのは、ドイツでは基本的に首相は自由に議会を解散することができないということである。唯一可能になるのは「信任案の否決」の場面であり、与党議員にわざと自身の信任投票を否決させるというものである。この「禁じ手」的な解散方法は現在までに3回実施されたことがあるが、状況次第で違憲とみなされる可能性があり、敢行するには大きな政治的リスクを伴うためほとんど発動されることはない。憲法学者の間ではこの「信任案否決」の規定を通じた首相の自主解散は、制定者が意図したものではなく、単なる設計ミスであると理解されている。(左はベルリンの首相府)
戦後ドイツで開催された国政選挙の回数は16回、首相の数はわずか8人であり、これはイギリスなど他の議会制民主主義国家と比べても際立った安定性を示している(ちなみに戦後日本の衆院選は23回、総理の数は29人である。)。もともと連邦制、多党制をはじめ権力分散の傾向が強いドイツの政治構造の中で、個々の政権のパフォーマンスが決して低くないのは、議員任期である最低4年間という時間を政権が確保できるという、期限面での安定性に負うところが大きい。
「民主主義とは期限付きの権力である(Die Demokratie ist Macht auf der Zeit)」の原則が、ドイツでは強く志向されているのである。
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