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望雲録

のぼってゆく坂の上の青い天にもし一朶の白い雲が輝いているとすれば、それのみをみつめて坂をのぼってゆくであろう。

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ボン~ドイツ・デモクラシーの故郷(2)

 日本人にとっては「西ドイツの首都」としてのイメージが圧倒的なボンだが、ドイツ480px-Beethoven.jpg人にとってはあのベートーベン(Ludwig van Beethoven)の故郷として名前が通っているようである。そういえば市の観光案内所で渡されたパンフレットにも「ようこそベートーベンの町へ」と書かれてあったような気がする。実際、政治関連の施設は市の南側、ライン川沿いの緑地に造成されたため、中心部からはやや距離がある。空間的には旧市街との連続性はないので、一般の観光客はわざわざ足を延ばすことはせず、中央部の街並みやベートーベンの生家などを見て回るだけで済ますことも多いようである。ドイツの地方都市共通の特徴に違わず、ボンもこざっぱりとしたまとまりの良い街並みが美しく保たれており、もちろんここを歩くだけでも十分訪れる価値はある。

 ボンはライン川沿いの町として、ドイツの中では比較的歴史の早い時期に拓かれた。その起源はやはりローマ帝国軍の駐屯地としてであり、文書上その名が現れるのはちょうど紀元前後のあたりのことである。だがそこから順調に成長を遂げたというわけではなく、ゲルマンとの抗争を通じて大いに荒廃し、一時的に放棄されたりもした。
 ボンが再び歴史の表舞台に姿を現すのは北隣に位置するドイツ屈指の大都市、ケルンとの関係においてである。ケルン大司教は中世以来神聖ローマ帝国の七大選帝侯の一角として大きな権勢を誇ったが、ボンはその選帝侯の居住地として好まれ、16世紀以降その地位が定着していくのである。

DSCF9526.JPG ただ独仏の国境という戦略上重要な位置にあったためか、その後も繰り返し戦禍に見舞われ、その度に市内は大きな被害を受けている。周辺地域が落着きを取り戻し、現在のような街並み整備され始めるのはようやく18世紀に入ってからのことであり、選帝侯のお膝元として瀟洒な文化都市としての性格を色濃くしていく。ちなみにベートーベンは1770年、選帝侯の宮廷楽団長の家系に生を受け、22歳でウィーンに移るまでボンで活動していた(左はベートーベン家の中庭)。この町では珍しく王侯の威厳を感じさせる華麗なロココ様式の宮殿が建設されたのも、c5e590fc.jpegこの時代のことである。この建物は現在ボン大学の本館として使用されている。


 1794年、フランス革命軍による占領により時の選帝侯が逃亡し、ボンはフランスに編入されることになった。同時に多くの貴族が町から逃亡したため、ボンは城下町としての基盤を失い、再び苦難の時を味わうことになる。ただこのフランス時代にラディカルな民主的制度や思想が流入したことは、その後この町に人民主義的な機運を醸成することにつながったとされる。果たしてボンはドイツ帝国、ワイマール共和国期を通じ、カトリック中央党の牙城としての性格を強め、「議会政治を志向する保守勢力」の強力な地盤として成長していった。ナチス台頭に際しては様々な妨害工作にも関わらず、中央党はこの地域の地方選挙において最後まで第一党の座を守り抜いた。

 第二次大戦直後、ボンはイギリス占領区の支配下に置かれる。都市としての規模が中途半端であったためか、隣のケルンが空爆と地上戦で壊滅状態に陥っていたのに比べると比較的被害が少なく、市街に手っ取り早く使用に耐えうる建築やインフラが一定程度残存していた。そのこともこの町を首都候補に押し上げる理由の一つとなったとされる。
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読書、旅行
自己紹介:
三度の飯より政治談議が好きな30間近の不平分子。播州の片田舎出身。司馬遼太郎の熱狂的愛読者で歴史好き。ドイツ滞在経験があり、大のビール党。
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