のぼってゆく坂の上の青い天にもし一朶の白い雲が輝いているとすれば、それのみをみつめて坂をのぼってゆくであろう。
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「ゲルマン人はよそ者と結婚して自分の血を汚すことをせず、純粋な民族の一体性をとどめている者たちである。彼らはみな同じ外観をしている。鋭い眼差しの碧眼、赤みがかった金髪、雄大に成長した体躯。」
タキトゥス(右)『ゲルマニア』からの引用である。タキトゥスは高度な文明生活の中で堕落していくローマ人に対するアンチテーゼとして、「高貴な野蛮人」たるゲルマン人を高く評価していた。
今日ではナチス流のいわゆる「アーリアン学説」を学問的に支持するものはいない。もとはインド=ヨーロッパ語族を話す人々共通の祖先として観念されたのがアーリア人で、古代にイラン・インドに入植した民族の「高貴な者」という意味の自称が「アーリア」であったとされる。この言葉はワイマール下のドイツにおいて奇妙な学説に発展する。すなわち、ゲルマン民族(つまりドイツ人)こそがこのアーリア人の最も純粋な生き残りであり、それゆえ諸民族の中で最も優れた人種なのであって、他民族を征服し世界帝国を築く使命を有する、というものである。その際、目下最大の標的となるのは、言うまでもなくユダヤ人であった。
子供じみた妄想としか思えないこの思想が、ナチス下のドイツでは国法という形に凝結したのである。1935年、例年通り開催されたニュルンベルクの党大会で即席で可決された法律ー「ドイツ人の血と名誉の保護のための法律」及び「帝国市民法」、通称「ニュルンベルク法」である。
同法によりドイツ人とユダヤ人の婚姻及び性的交渉が全面的に禁止され、違反者の男性には懲役刑が科せられた。同時にユダヤ人及び混血者の血量の度合(100%、50%、25%)に基づいて市民権を制限した。純粋なユダヤ人は市民権を剥奪され、公務や医師、弁護士などの仕事から排除された。この法律を契機に、以後ナチスのユダヤ人迫害政策がその度を強めていくことは周知のとおりである。(左は法律の概要を示す図解。)
婚姻や性的交渉を禁ずることで真正面から「血の保護」を達成するー人間の最も原初的な部分をこじ開け呼び覚ますようなどす黒さを感じさせる。実に古のゲルマンの野蛮さが、仮面を変えて20世紀に姿を表したような光景である。
ニュルンベルクはこの法律によって更に「ナチスの街」としての性格を強くした。そのことはこの街に対する連合国側の敵愾心をかき立てた。ニュルンベルクは大戦末期特に激しく空爆の標的となり、市街地の90%が破壊され、旧市街は廃墟と化した。ゲルマンの都の哀れな末路であった。
瓦礫の中に進駐してきた米軍は、まさしくこの地がナチスの拠点であったという理由から、その責任者を断罪する機関をこの地に開いた。ニュルンベルク国際法廷である。4年の長きにわたりナチスの闇を暴き、裁いた。(右はかつての法廷だった建物。)そしてニュルンベルクも新しい夜明けを迎える。
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