のぼってゆく坂の上の青い天にもし一朶の白い雲が輝いているとすれば、それのみをみつめて坂をのぼってゆくであろう。
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不思議と休日よりも平日の方が「書きたい」欲求が高まる。
組織人として一日中人と顔を突き合わせて仕事をして帰ってきたときにふと訪れる一人の時間、とりわけ晩酌で気分良くホロ酔いになった時などは、自分の中で樽詰めにされ熟成されていた内的思考のエキスが何かの拍子にコルク栓を弾き飛ばして勢いよく外部に噴出する。そのエキスは揮発度は極めて高1ku
、酒に鈍りはじめた頭の芯を置き去りにして脳膜を小気味よくシュプールをえがきながら滑走する。といって軸取りはプロのようになめらかな安定感があって、決して無様な転び姿とともに白雪を舞い上げたりはしない。
小説家ならば一気呵成に仕事にとりかかるべき頭の釜の温まり具合だろう。無論、こういう頭はちまちまと外国語を読んでリサーチをするための頭ではない。
「社会学にグランドセオリーはありうるか」という、アカデミズム的には少しスケールの大きな話をしてみたい(実社会的にはどうでもいいこと極まりないが)。
科学の定義が「真理の探求」にあると厳密に定義した際、社会科学の価値は自然科学の価値の百分の一(万分の一?)もないというのが私の持論である。
「真理」が「真理」たり得るには、「斉一性」と「予測可能性」が決定的に重要となる。すなわち、「同じ条件と環境を用意すれば、世界のどこでもいつでも、常に等しい結果が得られる」ということである。自然科学はある「仮説」がこの真理の要件を充足しているかどうかを試すべく、様々な人工的な条件下で「実験」を繰り返すことで、その仮説が「理論」≒「真理」として成立するかを客観的に検証することができる。人工的な環境を設定し、「実験」をそれこそ無限に繰り返すことができるというのが、恐らく自然科学が社会科学と決定的に異なる前提条件である。(もっとも、多くの自然科学の理論はこの「真理」の要件を一定の条件下では満たさないことの方が多い。その矛盾を更なる実験で以て検証し、より高度に精緻な理論化に挑むのが自然科学者のレゾンデートルである。)
対して、社会科学は、政治学も経済学も社会学も、その根底の基盤として、「歴史」にしかよるべきものがない。人間社会を対象とする以上、一定の理想条件下での「実験」を繰り返し精緻な検証を繰り返すだけの術を、社会学者たちは端から与えられていない。彼らは別の「歴史学」というこれまた不確実な学問のフィルターを通してしか知り得ない人間の有限の「歴史」を材料に、条件設定の極めて不十分な過去の実例を引用しながら、砂上の楼閣を積み上げているに過ぎない。その気になれば「実験」によって何千回、何万回と反証の嵐に理論をさらすことができる自然科学とは、根本的な性質が異なる。
社会科学の実務家ー政治家や官僚ーは、それが砂上の楼閣であることをよく心得ている。
また、学者でも多少は大人な人物であれば、社会科学と自然科学と同列に論じることはしない。むしろ、彼らが研究の過程で得た人間や民族、国家に対する多分に直感的な「洞察」「叡智」(≠「理論」)こそが、真理という価値を離れ、「知恵」「教訓」という形で、人間社会と実務家の意思決定とに貢献しうることを悟っている。そして、そうした姿勢は象牙の塔にこもる訓詁の徒よりも、実務家に歓迎される。しかしこの関係は常に緊張をはらんでいて、実務家に近すぎる社会学者というのは往々にして実務家の利害に引きずられ、また阿るために、その洞察力が曇りがちになる。いわゆる「御用学者」の問題は、よるべき「真理」の極めて脆弱な社会科学者にとって、より深刻な問題である。「正しいから正しい」と言い切るだけの強固な論理的基盤が、社会学者には欠けているのである。
結局、社会科学者がどこまでまっとき意味で「科学者」になれるのかという問いに対しては、私はどちらかと言えば常に白けた視線を向けている人間である。社会科学者はどうあがいても自然科学者と同様の意味で「科学者」の称号を得ることはできない。それは彼らの能力の問題ではなく、選んだ研究対象の分野の問題である。その限界を背負いながら学者としての職業的召命に従うべく学究としての日々を生き抜くのは、想像以上に困難なことだろうと思う。
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