のぼってゆく坂の上の青い天にもし一朶の白い雲が輝いているとすれば、それのみをみつめて坂をのぼってゆくであろう。
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日本では年の瀬が近づいていることもあって鳩山政権100日のレビューが盛んである。実はドイツでも10月の新政権成立以来政治的には面白い出来事がたくさんあったのだが、現地で気軽にドイツ語の情報に手を伸ばすことができない現状ではどうしてもドイツ関連のエントリーをまとめるのは時間がかかるので、怠け怠けてここまで先延ばしにしてきてしまった。
このブログのそもそもの読者層はドイツに興味がある人たちであり、最近ドイツ関係の記事が少ないじゃないかとのご指摘?も頂いてしまったので、今回から断続的ではあるが現メルケル政権の閣僚を一人一人紹介していく形で現在のドイツ政治の課題をおさらいしておくことにしたい。
ちなみにドイツにおいては一旦首相の手により大臣が任命されその所掌分野と大方針が指定された後は、基本的にその政策における第一義的な責任は大臣が負うという原則が強い(Ressortprinzip)。現在のメルケル首相が調整型の政治家であることも相まって、基本的に重要政策においてスポットライトを浴びる存在はその所管の大臣であるというのがドイツの政治文化であり、従って大臣ごとに政策を追っていけばそれなりに網羅的なレビューが可能になるのではと思う。
ということで、まず一番手はヴォルフガンク・ショイブレ(Wolfgang Schäuble、CDU、1942-)財務大臣である。
現政権の最重要課題の一つが、連立相手であるFDP(自由民主党)が主張する減税政策と経済危機に対応するための財政出動とのバランスをどのように取るのか、膨張する財政赤字の健全化に向け、どういった具体的な筋道をつけていくのかという問題である。
このコワモテの保守政治家は前政権では内務大臣を務め、テロリスト対策のためにインターネット上の網羅的な情報捜査や予防拘禁を可能にする法案を提出したり、ハイジャックされた民間航空機をドイツ連邦軍の投入により撃墜できるような憲法改正を行うべきとの主張を行い、ただでさえ左翼的なドイツ世論から強い批判を浴びた。
いわばメルケル政権の憎まれ役を演じ続けてきたわけだが、意外なことに世論調査での彼の政治家としての評価は決して低くない。一貫した保守的信念でもってブレない政策を遂行してきたことが評価されているのだろう。
今回のメルケル政権の人事のうち、このショイブレ大臣の横滑りは最大のサプライズであると受け止められている。ただ、連立相手からの減税要求をはねつけ、国民から不興を買うことも覚悟で財政再建路線を断行するという点においては、これほど適任な政治家はいないという、概ね肯定的な評価がなされた。
ショイブレはおそらく典型的な古い型のCDU政治家であり、今回のメルケル内閣においても唯一の戦前生まれで、突出して高齢である。かつてはコール政権後のCDUを担う首相候補として権勢を極めたが、献金問題で躓き、当時無名だったメルケルに党内の主導権を握られた。しかし彼の政治的キャリアはそこで終わらず、いわばCDU政権のご意見番的な位置づけとして、重要な政策課題を持ち前の頑固さでこなし続けている。
憮然とした表情と語り口、誰の手も借りず自分で車いすを転がし、静かに去りゆくその後ろ姿は、まさしく「老兵」と呼ぶにふさわしい風格を備えている。
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